2022年の夏、記録的に暑い日が続きました。ここ米子市は8月1日、これまでに最も暑い38.9℃となり、日本でも2番目の高温となったようです。山陰地方では南からの温かい風が中国山地を越えて吹き降ろす「フェーン現象」を起こし、日本海側の山形や豊岡と同様めちゃくちゃ温度が上がります。
暑い夏には少しでも涼しい夜を迎えようと昔から「怪談」が好まれますが、先日源氏物語を題材にした三島由紀夫作近代能楽集「葵上」の近代演劇を鳥取県浜村にある「鳥の劇場」という演劇場で観てきました。
「鳥の劇場」芸術監督の中島諒人氏の演出による、オーケストラアンサンブル・金沢のメンバーとの共演で、声楽部の無いミニオペラのような形式です。
まずハイドンの弦楽、ピアソラタンゴのミニコンサートがあり弦楽器の艶やかな音を楽しみました。話の内容は源氏物語で皆さんよくご存じと思います。葵上は光源氏の最初の正妻(当時は一夫多妻制)でありますが、深窓の姫で身体も弱く懐妊後も酷い悪阻(つわり)や「物の怪」に悩まされて病に臥せがちでした。さらに追い打ちをかけるように光源氏の愛人であった六条御息所(みやすんどころ)が「家来の車争い」や「愛の確執」などから「生霊」となって姿を現し、「物の怪」として葵上を憎み呪い殺すという恐ろしい物語です。難産の末夕霧を生むのですが、結局すぐに死んでしまいます。紫式部はこんなストーリーをよくも思いついたものですね。
それを三島由紀夫は現代風にアレンジし、舞台を精神分析療法や睡眠療法を行う病院に設定し、六条康子(やすこ)、若林光(ひかる)、葵(あおい)、看護婦の4人が登場します。康子は昔を語りつつ光に復縁を迫りますが光が拒絶。康子は姿を消します。光が康子の家に電話をすると康子は「家で寝ていたわ」と言い、先ほど現れたのが康子の「生霊」であったと知った光は驚愕、呆然とします。
その後葵はベッドから転げ落ち息を引き取るという内容です。
今回の「鳥の劇場」では千住明氏の作曲と「赤いスイートピー」「北の宿から」などのアレンジも入り素晴らしい演劇でした。「音楽療法」も取り入れ、結構ユーモアもあり「怪談」には程遠いような気もしましたが・・・。(2022.9)
左:「鳥の劇場」のある鳥取県浜村。1800年頃から浜村沖に帆立貝が多く発生し、その捕獲に当たった漁夫達が歌った「貝殻節」という民謡がこの辺りにあります。右は「貝殻節もなか」。