秋も深まり良い季節が訪れますね。「スポーツの秋」「読書の秋」「食欲の秋」、様々ですが、私は「芸術の秋」を満喫したので最近の経験をお話します。
以前福山医療センター小児外科に顧問医師として来られていた「島田憲次先生の絵画個展」が大阪池田市であり、招待状を頂いておりました(図)。
5年に1度開かれており、今回は第4回目ということでした。招待葉書にある「奥入瀬渓流」や「トルコのカッパドキア」等、様々な風景画がお得意のようでした。
中でも印象的であったのはポーランドの「アウシュビッツ収容所」の油絵2点で、2018年コロナ禍前に現地に行かれたそうです。
著作権の問題があるので絵の紹介は出来ませんが、テレビや映画でよく登場する貨物列車が入ってくる収容所の入り口に2人のラビ(ユダヤ教の指導者、僧侶)が偶然におられ描かれています。以前テレビドラマ「白い巨塔」で医学部教授になった財前五郎(この時は唐沢寿明主演)がアウシュビッツを訪れており、その案内人に「あなたは収容所を見学されて、殺される側の気持ち、殺す側の気持ちのどちらを考えましたか」と聞かれ、彼は「医師であるので殺す側の気持ちは分からない」と答えていました(但し、山崎豊子作小説の原文ではミュンヘン近郊のダッハウ収容所を訪れており、このやりとりはありません)。
財前教授はドイツで講演、手術を披露しているのですが、自分の執刀で行った遠隔転移のある消化器癌患者が渡欧中に亡くなり帰国後遺族に起訴され、自分も後に末期癌で亡くなるのですが何か暗示的なものを感じさせます。
また戦前のドイツ人のように純粋で勤勉な民族は先導者に簡単に操られて、ある意味「閉鎖的」になり容易に国家的な過ちに突き進むことを痛感させられます。(2022.11)