生体内では神経伝達物質など身体組織、細胞を構成する分子は常に「合成」と「分解」を繰り返しております。西田幾多郎氏の言われるように「ある矛盾をはらんだ姿が人生やこの世の実在である」。「多から一へ」「一から多へ」と部分と全体は常に逆方向に動きつつ常に同時存在的であり、またそれは空間的であるとともに時間的である、「絶対矛盾的自己同一」という西田哲学に通じる現象です。つまり、生命は合成と分解をほぼ同じ空間的、時間的に繰り返しており、このことが生命の本質であるということができます。鴨長明の方丈記冒頭「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし」も生命現象の一面を物語っているように思えます。(2022.12)