2020年の現在コロナウイルス感染が拡大していると政府関係者やマスコミから報道されていますが、医学的な専門の見地から言えば、まず鼻咽頭ぬぐい液による抗原検査やPCR検査での陽性というのはそこにウイルスがその時いること(付着)を示すもので、粘膜内に侵入して感染が成立すること(疾病発症)とは明確に区別する必要があります。つまり陽性者には結構な数の健康保因者が含まれ、また検査数が増加すると当然陽性者の絶対数は増えるのは当然で、今報道されているデータは感染が拡大していることを直接示すものではありません。太古の昔から微生物と人間の共生(大腸におけるビフィズス菌などの善玉菌等)が徐々に確立されて来ましたが、近代先進国においては衛生状態が良くなっており病原体との接触が少なく抗体を作り出せなくなり「きれい好き」がかえって免疫力を下げています。現在日本での重症者が他の先進国に比し少ないのは「経済力を犠牲にしても自粛を順守する」に加え、以前にほぼ全国民が受けていた結核菌を予防するBCG接種(他の国々では施行されていない)が効力を発しているという意見があります。某地域で行った抗体検査では住民の約1%で陽性であったと報告され、これを日本国民1.27億人に適用すると127万人の人が既にコロナウイルスに何らかの形で接触して免疫が出来たことを示しており、現在PCRや抗原検査陽性約3万人の40倍で、かつての麻疹や水痘のように自然免疫が徐々に出来つつあると考えられます。過去に流行した感染症を見ると、ペスト(黒死病)は14世紀のパンデミックでは世界の人口4.5億人の22%である1億人が死んだとされ、1894年に日本人の北里柴三郎などが原因菌を突き止め、ペスト菌を保有するノミや宿主のネズミの駆除と抗生剤等が大きな効果を上げました。また天然痘はウイルスが原因で致死率は20-50%と極めて高く、平安・室町時代頃から痘瘡と恐れられて来ましたが、1796年にジェンナーがワクチンを開発し種痘の実施によりほぼ根絶されています。しかし、いずれも流行から終焉まで数百年かかっており一刻も早いコロナウイルスワクチンの開発が待たれるところですが、当面は習慣喫煙者や糖尿病罹患、高齢者等ハイリスクの方は特に予防を心掛けていただきたいです。コロナウイルスは気道分泌物に含まれて飛沫感染しますが、一般にウイルスというのは単独では生きていくことが出来ず、必ず細胞内に入って増殖します。従って感染者や健康保因者から飛沫したウイルスが死滅するまで、手洗いやマスクにより鼻咽頭への侵入を防ぐとともに、鼻咽頭粘膜に付着したウイルスを頻回の口腔や鼻腔のうがいにて洗浄することが重要です。鼻うがいは痛いからと抵抗がありますが、某メーカーの「ハナ〇ア」というのは専用の容器で苦痛も少なく優れものです。(2020.9)