今年の4月に鳥取大学附属病院に「ゲストハウス棟」がオープンしました。
1階に調剤薬局とコンビニ、2階に多目的ホール、3階には患者さんや家族のための宿泊施設であるゲストハウス(化学療法のために外来に来られる患者さんや入院患者さんのご家族が利用される)があります。この2階の多目的ホールには4K対応の映写機、200インチの大型スクリーンが完備され、音響設備も抜群に設計されています。時々自主映画などが上映されていますが、FIFAサッカーワールドカップなどを大迫力画面で観たいものです。
先日、この多目的ホールで病院主催「岩見神楽(いわみかぐら)」が公演されました。日本の伝統芸能の「能」「狂言」「歌舞伎」などよりはるか昔で、わが国最古の芸能といわれます。題材は日本神話の「天岩戸(あまのいわと)」伝説にさかのぼり、岩戸にお隠れになった「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を誘い出すために、「宇津女命(うづめのみこと)」が岩戸の前で舞った妖艶な踊りが起源とされています。まるでリヒャルト・シュトラウス作曲オペラ「サロメ」の「7つのヴェールの踊り」のようです。今回の出演者は島根県(東部の出雲の国と西部の岩見の国)津和野町を本拠地とする「左鐙社中(さぶみしゃちゅう)」の方々で、迫力のある舞台を堪能しました。大学生時代に親しかった浜田市出身の友人にクラシック音楽の話をしていた時に「長谷川。お前、神楽って、観たことあるか。オペラに通じるものがあるからいっぺん観た方がえーよ」と言われたことがあります。この時からずっと気にはなっていたのですが、なかなか機会が無くて、約40年以上たった今回、やっとその夢が実現しました。
今回の演目は「塵輪」「恵比寿」「天神」「大蛇(おろち)」の4つでした。印象的なところを紹介しますと、「恵比寿」は大阪今宮や西宮の戎(えびす)神社で「商売の神様」で有名ですが、釣りの名人で米子の海岸でにこやかに「鯛」を釣る姿は微笑ましいものです。「八岐大蛇(やまたのおろち)」伝説の「須佐之男命(すさのおのみこと)」は、札付きの「ワル」のため高天原(たかまがはら)を追われたのですが、出雲の国にたどり着くと7人の娘が大蛇にさらわれたと嘆く老夫婦に出会います。この「ワル」は知恵を働かせて大蛇に毒酒を飲ませて退治するわけです。8つの頭をもつ大蛇との格闘は小太鼓、大太鼓の囃子も入り、煙も出て迫力満点で、海外でも大人気のようです。その尻尾から出ていた剣を「天の村雲の剣」と名付け、天照大御神差し出して、最後に残った美女「稲田姫」と結ばれたということです。何か白けた話ですが、因みにこれが日本で最初の結婚とされているようです。(2022.12)