新型コロナウイルス濃厚接触者

 先日、私は遂に「新型コロナウイルス濃厚接触者」に認定されてしまいました。

 認定と言っても「○○学会認定医」「△△認定看護師」などと異なり認定証もなく、メリットどころか犯罪者の烙印を押されたような印象があります。

 感染まん延以来当初より山陰地方の陽性者は少数を誇っていたのですが、7月に入ってから急増し何か嫌な予感はしていました。病院には小さなお子さんがいる看護師さんが多く勤務されており、そのうち1人が感染され全員濃厚接触者と認定され「早く家に帰って、ウロウロしないように」という命令が来ました。歯科受診など予定していた計画は全てキャンセル、この日予約していた4回目ワクチン接種も延期となりました。翌日PCR検査をして全員陰性が確認された後、夜になってようやく放免されたのです。最近のデータで、コロナウイルス陽性が確認された人との濃厚接触者のうち、いつも一緒にいる家族の約半数が陽性と判明するみたいですが、職場などでは陰性のことが多いようです。

 一般に手術においてはサージカルマスクの上にガウンのマスクをして対策をします(上図)。それで穿孔性腹膜炎で細菌だらけの腹部、消化管の手術や移植後でエプシュタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルスに罹っている臓器の手術、時にエイズウイルスや肝炎ウイルス、RSウイルス肺炎を併発している時にも対処していますが、これで罹患したということは殆ど聞いたことはありません。これ以上対処するならN95マスク以上の防護マスクが必要になるでしょう(下図)。

 今回の検査や自宅待機なども「念のため」という理由が大きく、日本人が好む「念のため」に多くの労力が割かれており、必要な人に治療が及ばない、かなりの人が仕事に行けないという現実もあります。これを是正するために「必要が無かったら救急車を使わないように」「軽症者はなるべく病院に来ないで自宅で検査をしてください」或いは「濃厚接触者の認定をしない」など、代替案が出ています。(2022,8)

手術室の模様
防毒マスク

何故1つの細胞から色んな組織ができていくのか

 最初1つであった受精卵は細胞分裂を起こし(上図)、体細胞がそれぞれ決められた運命をたどって(プログラミング)色んな細胞、組織、器官に分化、発達していきます。つまり内胚葉からは肺や消化管、中胚葉からは心臓や筋肉、腎臓や赤血球、外胚葉からは皮膚、脳神経などが発生するのですが(中図)、この時最初からあるゲノムDNAの遺伝子は変更せず、後から起きる変化によって遺伝子が発現してそれぞれの細胞、組織に分化するわけです。これをエピジェネティクスといいます。ちょっと難しいですが、要するに最初受精卵が有するゲノムDNAは終生変わらないのに対し、少しだけ修飾されて(DNAのメチル化、ヒストンのアセチル化など)性質がかわっていくというものです(下図)。これによって様々な現象が理解できるようになった新しい分野です。(2022.8)

受精卵から卵割。(新発生学より)
体細胞分裂により三胚葉に分化していく
染色体を構成するゲノムDNAとエピジェネティク変化(仲野徹「エピジェネティクス」より)