鳥取大学病院で行われているロボット支援下手術について紹介します。 ロボット支援といえば、荷物の運搬などを人間の代わりにロボットが行なってくれるものと思われるかもしれませんが、そのようなことになれば我々外科医の生命線が絶たれることになります。ロボット支援下手術の原理は内視鏡手術と同様に、お腹や胸の中を内視鏡で覗きながら、術者が遠隔捜査して手術を進めるというものです。上図は離れた場所で術者が内視鏡で映し出された画像を見ながら手許にあるハンドル操作をするサージョンコンソールを示します。中図は患者さんの側の操作部位で、内視鏡のカメラと実際に使用する電気メスや把持鉗子(組織などをつかむもの)などを挿入するペーシャントカートです。下図のような手術画面を見ながら手術を行います。画像は3次元画面で見え立体的な手技が可能となります。鉗子の先は多関節機能となっており、直線方向の操作しかできなかった従来の内視鏡手術とは異なり、360度どの方向でも操作が可能で拡大視されるため、複雑な剥離(血管などの組織を周りからはがすこと)や吻合(腸などを縫い合わすこと)などで繊細な操作が可能となります。また人間の手の動きがロボットアームに伝わるのですが、手振れがなく安定して手術できます。さらに術者は清潔操作が不要で腰かけて出来るので疲労も少なくて済みます。図2は2つのコンソールシステムで指導者が隣で同じ画面で操作するなど教育体制にも優れております。鳥取大学では2010年に低侵襲外科センターが設立され、2020年8月までに計1330件のロボット支援下手術が行われており、全国でも有数の施設として指導的立場にあります。泌尿器科が最も多くその6割強を占め、呼吸器外科、消化器外科、婦人科、耳鼻科(通常の手術視野では届かないような咽頭などでも比較的容易に出来るようです)、心臓血管外科がこれに続きます。小児外科では体格が小さくあまり普及していませんが、現在臨床応用に向け準備中です。ロボット支援下手術の欠点としては触覚がない、コストが高いなどの問題がありますが、国産の機種が8月に製造販売承認を得ており、価格も1/3くらいに抑えられ今後の普及が期待されます。(2020.10)
実際に行っている手術の画面