前肢が手となり言語中枢が出来たる事の必然にして
精神と物質とふ語の生まれしより番号制へと向ひてゐたり
物質の一面持ちて精神のあり得る命の働きなれば
何年生何組といふ学校の仕組も初まる番号制にて
国際化へ肥大なしゆく世の中の番号制は必然にして
人格を否む番号制を打越へる大なる情念創りゆくべし
旺んなる短歌や書道記号化へ対ふ日本の情念として
番号制素直に入れて内面の道へ力を?しゆくべき129
誰ももつ歓び悲しみ各々の特異の内面究めゆくべし
網戸越しに見ゆる知人のぼやけゐて愛憎淡く来り去りゆく
人類がながくかかりて見出でし個性あくまで究めゆくべし
環境の悪化を日々報ずされど年々寿命の伸びてゆきをり
冷ゆる風渡れる彼方稜線の起伏藍濃く空を分てり
米の飯葉へると立ちぬ伝へ来し労苦の歴史頭かすめつ
腕に針鼻に管さし累々とベッドに横たふ文化と言へり
土担ふと糞に耐へるを競ひたる日本の神のおかしさ愛す
枯れたりし花殻落ちて緑照り充ちてゆく空の現れ来たる
仰向きて両手にまぶた開けてをり目薬差せし後のしばらく
転作の大豆畑に鳩群れぬ枯れて撥けて落ちゐるらしき
怒りゐる女の顔を眺めをり角張る頬の歳露はにて
目薬を差して読みをりしばらくは蒼穹に目を放ちてやるか
人の顔変りてゐるは内面の変りてをりて言葉を交す
咲きし花眺めて居りぬ残りなく承けたる性を露はしゆけり
人が言よると告げられてをりぬ対手なき故の不安がひろがりぬ
浮びゐる蜘蛛の白さよ秋となる空気は日々に澄み徹りゆく