知る顔の次々乗りておのずから車内を満たす笑ひ合ふ声
久しぶりに出合へる顔に漏れる笑み心開きし声の明るし
降るとなき雨に紅葉の色冴えて桜並木の色の明るし
大きなる屋根のどっかと大書院新たに篠山城跡のあり
山の芋椎茸大豆猪の肉口になじみし栗なぞ記す
バスを降り連なる人にいち早く焼栗試食と媼出しをり
石垣の石を採りゐて死にゆきし人等を小さき祀に祀る
めぐる壕に水の満ちて低き家大きなる樹を写すしずけさ
水に浮く落葉を打てる細き雨壕に一年暮てゆきつつ
経験とおもひて飲みし黒豆のコーヒー我の舌になじまず
約したる細大根の漬物とわが食ふしめにぶら下げ歩む
量販店電飾などを掲ふ店あらざる街と眺めて歩む
若者の少なき街かと電飾の見えざる街を歩みゆきつつ
神域に苔むす杉の茂く立ち宮居小さく古び建ちたり
我も亦移れる時の中なると古びし宮に拍手を打つ
葺く瓦詳しき屋根の家のあり崩れし土の少覗きて
手に重き荷物が心を満しゐて夕闇迫るバスに入りゆく
土と炎に表はる心知らざれば並べる陶を腰に過ぎたり
鈴成りの捥かざる柿の実赤く熟れ植えたる人との乖離に照りぬ
人の声乗せたる電波の密密と空に混めると大きなる空
物の力駆使して空を我となす航跡雲のひたすら直し
見廻せる目を導きて羽根そびへ木の天辺に鳶の止まりぬ
本を閉ぢ深夜を一人の凱歌挙ふ今日判り得し己が思ひに
草等皆枯れて岩間のすきとほる水を眼に帰りゆくかな
減食とヘルスメーター下りゐつつ一昨日もかく思ひたり
飛行雲鋭く空を切りし跡とんぼは急がぬ羽根光らしぬ
近寄れる我を見ること多くなり鴉はごみを啄みてをり
回復の願ひに点滴光りつつ針跡くろき腕に入りゆく
怠惰なる日々を病気にかこつけて自己への弁解なしてゐるかな
山上に播磨山脈見廻しぬ視界狭窄避けんが為に
癒えてきて腹の力のややに増ししずかに坐り得るべくなりぬ
黒土より掘られし葱は洗はれて養ひ来る白き根をもつ
土の何処に白き肌のありたりと洗はる葱に問ひにけるかな
十人のよろこびかなしみ揺りゐつバスは坂道登りゆきたり
ことごとく枝を切られし裸木が冬澄む空に風鳴らしをり
澄む水を踏みて濁せし溜りなどのありて買物下げて帰りぬ
気をつけて還れとわれも常識の言葉を出してん孫に手を振る
際立ちてひげ剃り落ちぬ改まる年の初めの剃刀替えたり
億年を地に成りたる油燃へ我は掌かざしゆきたり
アラブなる砂より湧きし油にて我の体を温めてをり
はるかなるアラブの油に手をかざし生きてゆくべき暖をとるかな
この地球半周なして来りたる石油と思へて手をかざしゆく
見も知らぬアラブの砂より湧き出でし油燃やして手をかざしたる
恩恵と祖先等言へり山に入り汗に薪を取りたることを
スイッチを押して炎の昇れるを当然としててのひら出しぬ
櫛の歯の欠ける如くといふ言葉さながら街はさびれゆくなり
アーケード破れて日差しもれてをり小売り革命に抗はんとしたる
店仕舞全品半値の赤き文字書かれて店前人影見えず
駐車場となりたる隅に黒川局と碑立ちて祀りたり
こわされし家の隣の古りし壁縄巻く升の朽ちしも覗く
シャッターを閉せるままの家のあり駐車場の一つ増ゆるか
知る人の感慨呼びて立つ墓が無縁の我と雨に濡れつつ
大きなる福を享くると和尚言ふ捨てて生きんと思へる我に
永遠の前に立てると思ふわれ更に恵まるものなどあらず
大きなる福とは何ぞわれを知る人との会ひあるかも知れぬ
私はあなたのファンになりましたと言はれぬ狐につままれしごと
上ぐる足大地に還るおのずから運ぶ一人の歩みなりけり
地球より足の離れて動きもつ我と思ひぬ歩みゆきつつ
上げし足大地に還る音立つる昏れゆく一人の歩みなりけり
地を蹴りて歩みゆく足上げし足地に還りして歩みもつ足
両極に時計の振子動きをり遂に決め得ぬ机の上に
おもむろに退へゆく病ひ目を閉ぢて命運ぶは我にはあらぬ
漂着のところに伸ばす根の出でて水草は岸の波にゆれをり
ひとの目を逃れ来りて人の目の無きさびしさに歩みてゐたり
はるかなる声にそばだつ耳となる人の声より逃れんと来し
大広場埋めて手を振る万の人互に歓声あふり合ひつつ
狂ひたく声挙げ手を振る万人の煽り煽られ広場のありぬ
昨日より日向に来りゐし猫はとがむる眼に我を見つむる
ゆるゆるとひれを動かす魚をり希ひし我の生き態にして
貫きて白く噴きゆく飛行雲大きな空を人渡りゆく
大空を白く貫く航跡雲人のゆかむは限りのあらず
雲一つ見ぬ大空と思へるに人行く航路余裕のなしと
熟れ柿の赤きが夕日に透けるとき柿右エ門の目の狂ひゆきたり
薪取る足に成りひる径なりき繁り朽ちたる雑木覆ひぬ
薪取る用なき山は忘られて入るを拒める草葉繁りぬ
ぴしぴしと音立て氷張りてゆき障子距てて闇限りなし
傘型に冬の梢の空を抽き来らん光りの呼び声を待つ
松食ひに朽ちたる杉の並び立ち薪とらざる山の荒れたり
氷張る下に張りゐる氷見え刃の白き光り走らす
曲る背となりて吹きくる夜の風昔の人は寒声とりき
イネゲノム解読完了スイス企業イネは日本であひかりしに
太陽の沈みてゆきて闇に湧く人の作りしきらめくあかり
十二月三十一日世紀末明けたる朝は新世紀にて
見はるかす方より寄せくる万の波大きな海は一つたゆたふ
太初より寄せては返す万の波海は一つのたゆたひとして
イネゲノム解読急ぐと農水省スイスに遅れとりしあせりは
食糧の明日を決めくるイネゲノム多くの人は読まざるらしき
如何ならん八十二才となるらんか初めてなれば大切にせん
新聞に西紀と皇紀並び載り我等重なる時間に生きる
風波形の残れるままに氷凍てて耳削ぐ風の光り過ぎゆく
生きゐるは罪の如くに涙垂り遭難船長状況語る
戸を開けて朝をこめたる霧深し日本に開くる未来のありや
新月の夜に番人首刈しと闇を裂きたる光り鋭し
鴨の毛のかたまり池に漂ふにしまる瞳となりて過ぎたり
太りたるこのごろなると思ひゐしが天恵のごと下痢となりたり
天辺に止まりし鳶はもつ羽根の及ぶ限りを眺め渡りぬ
大空に飛び交ひ舞へる鳶の群次第に高く晴れ渡りたり
山際に草の枯れ伏す他のありて汗に拓きし希ひを埋む
豊饒の藁を抱きて拓きたる畑にてあらん草に埋もる
新月は細き光りを闇に研ぎ番人首を刈りし夜なり
このところくちなしありき咲く花を映せし水の今も澄みたり
はつかなる緑によもぎ萌え出でて野焼の跡に日差し渡りぬ
夜を目覚め寝返り打ちぬおのずから反らん方を欲してゐたり
西暦と日本紀年を並び記しわれ等重なる時を営む
枯れ切りし堤の草にたれ下り氷柱は透明の光り走らす
窓ガラスに額打ちたり降り止むと聞きたる声に足の早みぬ
中心に向かひて渦の巻込みぬ悲しみは斯くの如くにありき
くり返し一首の歌を温めて散歩の終る家路を辿る
木せんぼの先に球当て走りゆき英雄新たに誕生なしぬ
思ひ切り声挙げ手を挙げ騒ぐを欲しゐて球場に新たな英雄生る
波打ちしままに凍てたる溜り見え襟寄せ歩む寒さのつづく
並べらる食料品の札見つつ小さくなりし胃袋をもつ
山積みに並べられたる食料品乏しく食べしんものうまかりき
手の甲に疾の如きが出来てをりいつとは知らず何故とは知らず
孫悟空が駆けし仏の掌を人工衛星が廻りてをりぬ
ためて来し不満の如く噴き上り煙は空に拡がりてゆく
平かな水の面とおもへるに反す光りの壁に乱るる
入場者総数報告されてをり我も総理も一人として
お前等は一銭五厘と言はれたり地球より重しと平和の変へぬ
亡き母よ承けし頭脳の至り得る限りに着きしと今を報さむ
整へし髪の毛写れ今一度指に押へて少女出でゆく
夕陽は犬とわれとを染めてをり無事に過ぎたるひと日の歩み
はつかなる緑は南の風を呼び野焼の跡に蓬萌しぬ
草未だ生へざる水のうねり貝へ潜みし魚の動き初むらし
子供等の声去りゆきて田の広く夕は没りたる刈株白し
霜に萎へ土に這ひたるたんぽぽの茎みじかくて花を着けたり
栄たる店のありたる跡ならん駐車場に稲荷ありたり
押し合ひて鉢に緑のチューリップ競へしものは鮮しくして
積れたる土のうの破れに草萌し春の光りはさんさんと降る
冬の株洗へる潮が育てたるあをさの青を飯に載せたり
渡る陽に山の梢のけぶらひて萌す若芽の生毛もたちたり
どうしても自分以上であることも以下なることも出来ぬと知りぬ
茜差す光り夕を満しゆく斯くおごそかに汝等終れ
呼気吸気調べて宇宙と一ならんヒンズー行者は岩頭に座す
平げし皿を眺めつ浮び来る太ったねえの医師の顔あり
三度目は解った顔にうなづきぬ如何なることか耳に澱みつ
この松の捩れはわれより深きらし山の端なる幹を見てをり
政治面読みて来し目に黒き雲湧きて巻きつつ競ひ走れり
今降りし雪融けゆきて土黒く明日を知らざる眼に眺む
星光る空ある故に血の暗く凝らす瞳に家路を辿る
一回り大きくなりて春となる渚に魚のゆるゆる動く
突きぬけて晴れたる空に白木蓮の花の挙りて光りを反す
クロバーは大きなる葉をひらきをり久の小さき葉群の上に
せんべいを噛む歯応へに我ありて行き詰りたるペンを持ちをり
開きゆく墨跡即ち宇宙にて自在ならざる腕をなぜをり
一杯と定められたる晩酌なり表面張力ぎりぎり入れる
山行けば空より声の降り来り杉の高きに人等の動く
起き出でて風邪の鼻汁の量増しぬ外気へ調節なしてゐるらし
腹の中にガスの生れゐる音のして宇宙の思考ここに切れたり
口に入れうんとうなずく相似形テレビに料理の宣伝競ふ
食料を積まれし傍に押し合ひて量販店に胃袋猛し
わが国の歴史記述を他の国の利益によって変へねばならぬ
郵便車止まる音してかすかなる凶か吉かの緊張配る
郵便車止まる音して歩み出ず外より我の行為は呼ばる
無雑作に坐りし布団に模様あり模様に賭けし命もあらん
胸に押す水に光りを遊ばせて人見ぬ池に鳩自在なり
貧乏をしてゐし時につけし仮面死ぬ迄外せぬしがらみのあり
藁葺の一軒ありて満開の桜の花がはなびらこぼす
碑に春の日そそぎ山を白に変へたる人の名前連ねる
エンヂンの音の響きて土返し春を人等はたたかひ生きてゆく
色黒き牛蛙が跳びぬ腐りたるこの水底に冬を潜みし
盛り来る頭(かしら)に飛沫噴き上がり波は砕けて泡にしずもる
取り落す茶碗の蓋に握力の衰へありて手のしは深く
轟ける爆音となり若者は風に向はん背を伏せてゆく
空区切る鉄骨繁く立並び大きマンション工事初まる
血を流し汗を流してあやまちに生きし我等が戦史読みつつ
あやまちとたとへ言はるも燃へし血は真実なりき戦史読みつつ
大きなる曲線を歴史の描くとき人の行動是非を超えたり
生と死の選択もちて迫り来し戦終りて悪と言はれつ
沸る血に出でてゆきたる戦なりき負けたる故の悪と言はれつ
生きゆくは他者を亡す行為にて死しては生れしことの意味なし
原罪を負ひて生れたる人なると思ひ結びて戦史を閉す
たんぽぽの黄金敷きたる草の径王者の歩み運びゆきたり
芽吹きたるみどりかすかにふるはせて風やはらかく頬をなでゆく
冬のまま立てる並木にさんさんと萌えを促す光りそそぎぬ
新聞をひろげる窓に鴉飛びそれぞれ生きる朝明けてゆく
腕時計ポケットより出て一時間おそくなりたる机に向ふ
窓開けるサッシに日に増すぬくもりのありて全く晴れ渡りたり
濁したる中に魚影かすかにて見究む瞳凝しゆきたり
窓開けるサッシの冷えのいつか消え畦にたんぽぽの花盛りたり
筍に沁みる光りに太りゐん去年の落葉の積りたる下
地の中に?食む筍の太りゐんそそぐは差しの背中ぬくとし
カーテンの透きし模様が明らかに障子に写り晴れて来りぬ
一まわり小さくなりて明子来ぬ母を送りし幾首かの後
光りもつ生毛に若葉萌しきて違へる色に木々のさゆらぐ
畦焼に枯れたる萩は地中より今年を継がむ若芽出したり
散ばれる羽根短きは泳ぎゐし?にてあらん撃たれたりしか78
湧き上る緑の泡に梢萌え春の光りはさんさんと降る
茹で上げて水に放てるアスパラガス青し今宵の晩酌を待つ
柿の種割られて白き胚のありわが祖父わが子の繋がれてゆく
大歳の祭りは当番のみ集ひ米作にては生活出来ぬ
鎖張りつながる犬の立上り近寄る我に前肢泳がす
目に深き枯草色を見てゐしが出す当もなき封筒買ひぬ
見つめゐる我に寄り来て子の問ひぬ瞳はひとつになるを欲せり
ぽつぽつと池の面に草浮ぶやがて隈なく覆ひゆくべし
無数の棘鎧ひ伸びゆく鬼あざみしろがねをなす光り反しつ
わが庭に植えたき思ひひしひしと淡紅色にぼたん咲きをり
ひれ長き飛魚箱に並べあり月光ひきて飛びしそのひれ
地の中に何を求めて伸びゆきし牛蒡が袋に収り切れず
散り敷きて白うずたかき雪柳過ぎゆく時のきびしさを積む
急速に明るき室に見廻して障子に木影ゆらぎ晴れたり
うんといふ返事は聞いて居らぬらしパズルに向ふ瞳離さず
蔭深む若葉となりて山並は棚引くもやに沈みゆきたり
光を噛む流れ終りて海近き河口に水の動くとあらず
枯草の覆へる下に朽木見えほしいままなる山の荒たり
一斉に魚等の水に潜きゆき失せし動きを瞳わびしむ
金の砂撒きたる如ききんぽうげ画面の一人となりて立ちたり
若草に人の坐れる帽二つ長く動かず空の晴れたり
足許の渚の不意に波ゆれて背を干し居りし亀の泳ぎぬ
草による魚ゆるゆるとひれを振り春の光りは原を抱きぬ
背を干してをりたる亀は首のばし泳ぎhじめぬ驚かせしか
きんぽうげ咲きゐる畦に足の向き春の半ばは既に行きたり
鬼あざみ刺を養ふ葉をのばし日差しはげしき夏近づきぬ
しろがねのうろこ光らせ産卵の雌恋ふ魚はひるがへりたり
照り出でてつつじの紅し梅の葉の蔭ふかまりてきたりし庭に
目に測る水の深さに四、五人の連立ち田植の季近づきぬ
たんぽぽの絨毯並び春行きぬ追ひかけたきと言ふにもあらず
過去とふが未来に関るその深さ歴史記述を韓国責める
たんぽぽのわたが構へし円型の巧も散りて春の過ぎゆく
黒雲の西空覆ひ鯉幟揚げたる家の今朝は見へざり
痛快な黄門ドラマ正体は民を抑へし強権にして
目に立ちて赤き筋増すサボテンの咲き出ずる花を用意するらし
シートにて囲む中よりユンボーの動きて更地とここもなるらし
梅の実の円み帯びきて落しゐる蔭ふかまれる庭となりたり
鯉幟尾の垂れ下り黄の花は反す光りを競ひあひたり
繁りくる土に青草青くして久し振りなる雨空仰ぐ
腰曲げし小刻みの歩みだんだんになりたくはなきわれとなりゆく
採点の少なきことを誇りたる若き日恋ひて歌会に居り
繁りくる木木は葉蔭に闇を生み伸ばさん枝を競ひ合ひをり
何がなし飴の入りゐる蓋を開け口さびしくて老ひて来りぬ
吊鐘にこもりし音のおのずから離れて谷を渡りゆきたり
鉛筆の芯を鋭く尖らせて原稿用紙の白きままなり
拡げたるノートの白く鉛筆の芯を鋭く尖らせてをり
腰弱き人の歩みに目の行きて買物終るを待ちてをりたり
水底を這ひて成りたるおのずから貝は砂切る殻を尖らす
人刺しし包丁百円と書かれあり殺人よりも安価をおもふ
有茜冬の寒さにすきとほり山と雲とに一すじひきぬ
くろくろと山横たはり夜更けぬ怒りておりし声も眠りし
追ひつきて屈めば亦も編笠のまろびて初夏の戯画となりをり
鬼あざみ刺を養ふ葉をひろぐてらてらと緑光らせながら
山並みはむくろの如く横たはりわが足音はそこに消へゆく
雪被くはるかな峯の日に照りぬ浮き一首の我にあるべく
太き枝のみ残されて刈り込まれすがるが如く新芽伸びをり
陸橋の上に陸橋架かりゐて尚渋滞の車連なる
傾ける屋根に葺く土露はにて半ば新たな瓦置きたり
格子戸の黒くなりたる家並び若き人等の姿の見えず
大和の富の七分ありしと格子戸の並べる家のいくつか空きぬ
石段の高く木影に消えゆくを見てをり登れば降りねばならぬ
老ひて来し脾肉の嘆き石段の高きに脚の途惑ひて立つ
かすかなるゆらめきもちて澄める水置かるる杓を取りて「ゆきたり
そそり立つ杉の巨木の深き蔭浮めん水はゆらぎ澄みたり
修復の成りたる塔を口々に言ふを聞きてし石段高し
ひびの入るコンクリートに草の生へ溜る埃に根を伸ばすらし
一望に展ける大和その昔国まほろばと言ひしを肯く