ジャイアントパンダ

今年の2月に上野動物園で生まれたジャイアントパンダの「シャンシャン」、和歌山県の「エイメイ」など3頭が中国に返還されました。私は昔、和歌山県白浜近くの病院に勤務していたことがあり、子供たちを連れてよく観にいったもので、いなくなるのは残念です。日本国内のパンダは50年位前から日中友好関係のために来ているということですが、全て繁殖研究を目的に中国から貸与されている形となり、たとえ日本で生まれても所有権は中国にあるようです。これは絶滅危惧を懸念されてのことみたいです。

竹の幹や葉(笹)を主食とするパンダはいわば「菜食主義者」です。一般に植物細胞は動物細胞と異なり細胞壁や植物繊維を持ちこれらはセルロースが主成分で、セルロースはでんぷんと同じようにぶどう糖(グルコース)から構成され、草食動物は腸内細菌によってぶどう糖に分解してもらってエネルギーを得ます。大昔の我々人間の祖先は盲腸が発達しており、ここに棲む腸内細菌によって植物繊維を分解していたようですが、動物の狩りをして火を使った調理により肉食が多くなると盲腸が退化してしまい植物線維を分解できなくなりました。脂質の摂りすぎにより生活習慣病に悩まされている現代人には、例えばパンダの腸内細菌を腸内に移植すると我々も竹や綿、紙などを主食として利用し健康的な生活ができるかも知れませんネ。

竹の葉を食べるジャイアントパンダ(無料イラストより)

人間を含め生物は糖分、脂質、たんぱく質などを外部から取り入れ、ぶどう糖やアミノ酸などに細かく分解して腸から吸収し身体の生体分子を合成し、またその一部を分解してエネルギーを作り出しています。「菜食主義者」については「ベジタリアン」とか「草食系男子」などの言葉が広く使われています。上記の栄養素のうち、脂質やアミノ酸の一部は他の栄養素から生成可能ですが、アミノ酸には必須アミノ酸と言って体内で合成できないものがあります。人間では9種類でこれらは食物から摂取する必要があり、菜食主義者は野菜だけでは生きれず、パンダ達は実は夏の間にタケノコや竹の新芽を多く食べており、これには蛋白質が高率に含まれています。ベジタリアン達も肉や魚などの動物性食品を摂らないだけで、ナッツや豆腐からアミノ酸を摂っているわけです。但し「草食系男子」はちょっと意味が違う様でWikipediaによると「恋愛に『縁が無い』わけではないのに『積極的』ではない、『肉欲』に淡々として心優しく、傷ついたり傷つけたりすることが苦手な男子のこと」などと定義され、かなりかけ離れた使い方になっています。

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2023年3月3日 | カテゴリー : その他 | 投稿者 : thth0922

「冬眠」と「冬季うつ病」

寒い時期には「冬眠」する動物が多くいます。ウイキペディアによると「冬眠」は狭義には「哺乳類や鳥類の一部が活動を停止して体温を低下させ食料の少ない冬季間を過ごす生態」のことで、広義には「変温性の魚類、両生類、爬虫類、昆虫などの節足動物や陸生貝などの無脊椎動物が冬季に極めて不活発な状態で過ごす冬越し」のことも指します。生体変化としては表のようなものが挙げられますが、極端な例ではある種の亀などでは冬季は完全に身体が凍結されて心拍と呼吸が停止し、春になると復温されて心臓が再拍動するものもいるようです。人間では遭難などで極度の低体温に陥るも1か月近く殆どの臓器の機能停止が起こるがほぼ後遺症なく回復したという事例が幾つか報告されています。特に小児の回復力は強く、これを利用したのが新生児低体温療法です。新生児では周産期に受けたストレスにより容易に重度の精神運動発達障害が後に残ることがありますが、このダメージを最小限に抑え障害を回避する治療がNICU(新生児集中治療室)で行われるようになり、2010年国際蘇生法連絡協議会で標準治療として推奨されました。さらに心臓手術に際して心臓が拍動している状態では手術が困難ですので、心筋への血流を遮断、心筋を冷却し冠動脈から心筋保護液を入れて代謝を押さえ心拍動を停止させることにより、数時間の開診手術などが可能となり術後の障害も最小限に抑えられます。この手技は心臓血管外科の黎明期から研究・開発され、今日の一般治療につながっています。

 

冬眠(無料イラストより)

冬眠中の生体変化

・体温の低下

・活動の低下によるエネルギー消費量の低下

・摂食の中止

・排尿、排便の停止

・心拍数の低下(場合により心停止)

・呼吸数の低下(場合により無呼吸)

最近マスコミなどで「冬季うつ病」という言葉を頻繁に目や耳にします。これは寒い時期に「こたつや布団から出たくない」「寒い時に買い物に行くのが億劫だ」などの寒さへの恐怖や躊躇以外に様々な症状が現れます。「気分が落ち込む。物事を楽しめず気力が減退する。イライラする」など、「一般的なうつ病」と同じ症状が見られますが、「冬季うつ病」では「いくら寝ても寝足りない(過眠。布団から出たくないに関係?)「過食(脂肪を貯め込む)」「体重増加」が特徴とされ、これらは人間における「冬眠」現象の名残だとされています。私も山陰に来てから体重が増えましたが、これは冬季うつ病か単に食材や日本酒が美味しいせいだけかは分かりません。心当たりのある方は、お互い気を付けましょう。

一般のうつ病と冬季うつ病の違い

 

 

一般のうつ病

冬季うつ病

睡眠

 

低下

増加

食欲

 

低下

増加

体重

 

低下

増加

2023年の大雪

今年の1月はメチャ寒かったですが、皆さまお変わりありませんか。

1月下旬の山陰地方は大雪で、国道9号線が20kmにわたり不通となり1000台以上の車が立ち往生となった10年前の悪夢を思い出させるような記録的豪雪だったようです。当時米子市で89cmの積雪があり、あるタクシーの運転手さんは「夜中車内に閉じ込められたが、命からがら脱出した」と言っておられました。今年の大雪では私は車を米子高島屋の立体駐車場に入れたきり出すことが出来ず結局8日間止めっぱなしにしましたが、鳥取県東部の智頭町では1000人足らずの方々が何日間か孤立した状態になったということです。

大雪のため駐車場から脱出出来ない車たち

同時期に全国各地でも雪災害が続き、身近な例では新名神高速の三重県で最大66kmの立ち往生が発生したようですが「立ち往生は一時的なもの」との判断で自衛隊や県に応援が要請されなかったことが大渋滞の1因だったようです。また2月に東京出張に行った時には最大10㎝くらいの雪のため都市機能は大パニックになっておりました。ホテルに帰るとテレビではテロップで注意喚起がなされており「歩くときは大股にならないようペンギンのようによちよち歩きをするように!」「倒れる時は尻もちをつくようにお尻からこけるように心がけましょう!!」など、箸の上げ下げを指示するような有意義な指導がなされていました。

男の恋愛は別名保存、女の恋愛は上書き保存

「カルメン」は男女の異なる恋愛観のため結実しない悲劇、「アイーダ」は時代に翻弄された男女の愛として終わっていますが、恋愛は男と女によって捉え方が違うようです。夏目漱石は小説「明暗」の中で「男の恋愛は別名保存であるが、女の恋愛は上書き保存だ」と言っています。ここで、その違いを生物学的見解から考えてみます。まず受精に際しては何億個もの精子が「戎神社の福男」のように1つの卵子を求めて我れ勝ちに突進しほぼ無尽蔵に作り出される精子をもって「数打ちゃ当たる」的な行動をとるわけです。これに対し卵子から見れば受精できる時期は約1か月に1度の排卵時のみで、しかも一生の間に作られる卵子の数が限られ、年齢も小学高学年から50才くらいまでです。このため卵子は優秀で健康なただ1つの精子のみを待っているわけで、大切な恋愛の時期を守り有効に選択するのです。

このようなことを休み中にぼんやり考えていると、2021年のショパンコンクールで2位と4位を受賞した反田恭平と小林愛美の電撃的結婚が報道されていました。どうやら「できちゃった婚(最近では授かり婚というようです)」のようですが、無責任な憶測はしないようにいたします。

受精に際し、唯1つの卵子に無数の精子が「戎神社の福男」のように突進する。ムーア「人体発生学」より

ウクライナ国立歌劇場「カルメン」と英国ロイヤルオペラハウス「アイーダ」

変異したコロナウイルスがまたまた猛威を奮っていますが、皆さんはお正月休みはどのように過ごされましたか?

私は感染対策を十分に行った上で、趣味の1つで道楽でもある「オペラ」を2つ観てきました。

1つは、ウクライナ国立歌劇場によるビゼー作曲「カルメン」です。ウクライナ歌劇場はボリショイ劇場(モスクワ)、マリインスキー劇場(サンクトペテルブルグ)と並ぶ旧ソビエト連邦における3大歌劇場です。以前キエフ劇場(キエフはロシア語、ウクライナ語ではキーウ)と呼ばれ、学生時代には歌劇場附属のオーケストラを聴きにいったことがあります。現在ロシアとの戦争の渦中にあるウクライナは、人口4000万人ちょっとと日本の約1/3ですが、肥沃な土地と恵まれた気候、水資源のため「欧州の穀倉地帯」と言われていることはご存じのことでしょう。この豊沃な資源と同様に、すぐれた音楽家を多く輩出しています。ギレリス、ホロビッツ、リヒテルなどのピアニスト、オイストラフ、スターン、ミルシテインなどのバイオリニスト、作曲家プロコフィエフ等、枚挙にいとまがありません。ただそのほぼ全員がヒットラーやスターリンに迫害されアメリカやイスラエルなどに移住し活躍されています。また第二次世界大戦中にキーウ近郊バビ・ヤールでナチスによる大虐殺を受け、昔から紛争の絶えなかった地域です。この事件を題材にしてショスタコ―ビッチは交響曲13番を創作し、暗く陰鬱な曲想によって民族の悲哀と迫害の偽善性や無意味さを表現しました。

「カルメン」の内容は周知のことなので詳しくは触れませんが、妖艶で美しい「カルメン」は自由で移り気なジプシー女で、これに翻弄される純情で一本気な竜騎兵の伍長「ドン・ホセ」が主人公で最後にはカルメンを刺し殺すのです。人が死ぬため「悲劇」として扱われますが、アリアが少なく「闘牛士の歌」や「ハバネラ」「カルタの3重奏」の舞曲風の歌、フルートとハープの美しい「間奏曲」などが有名で、すぐに口ずさみたくなるような「大衆性」に溢れています。

ウクライナ国立歌劇場による「カルメン」パンフレットより。最後のカーテンコールでは自由に撮影をしてよいと指示されていた。また「ブラボー禁止令」は出ていなかったので、以前の盛り上がりが感じられた。

もう一つは英国ロイヤルオペラハウスによるベルディ作曲「アイーダ」です。これは映画館での「ライブビューイング」として観ました。といっても2022年10月の上映の収録なんですが、ロバート・カーセンによる現代の軍事情勢を彷彿とさせる新演出で非常によくできていました。原本では古代エジプトを舞台にエチオピア人奴隷のアイーダがエジプトの将軍ラダメスへの愛と祖国愛の間で引き裂かれる悲劇です。カーセンは軍事力を行使する架空の大国を考案し、エジプト王(どこかの国家元首に似ていました)とその娘はそれぞれ明るい青、真紅のブランド服を身にまとっていましたが、その他の全員が軍服に身を固め、実際の戦争の映像を背景に映しだしていました。掲揚される国旗も赤と青地に白い★です。サッカーワールドカップなどで聴かれる「エジプト軍の凱旋場面」は大国の軍事行進を模倣し、最後に逮捕されるラダメスとアイーダは核兵器が収納されている地下室に生き埋めになります。ちなみにこの時のラダメスはTシャツのような濃い緑の軽めの服装でしたが、左胸の文様があるのかはっきり見えませんでした。 今回、新型コロナ感染に翻弄され、またロシア軍侵攻の只中にあって来日されたウクライナ国立歌劇場の公演と、大国を果敢に皮肉った歌劇「アイーダ」を観たことは得難い貴重な経験となりました。

ライブビューイング「アイーダ」 パンフレットより

みなさん 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

昨年クリスマスの時期には山陰地方で2回も大雪に見舞われ不自由な休暇を過ごしていましたが、今回新春に相応しい話題で新しい年を迎えたいと思います。

昨年12月に鳥取市で「Next Generation」という次世代アーテイストを発掘するコンサートが開催されました。対象は鳥取県在住のバイオリンを演奏する中学生、高校生で、難曲に果敢に挑戦されていました。中でも2022年10月に第43回全日本ジュニアクラシック音楽コンクールの弦楽部門で第1位となった米子市淀江中学2年生の坂口碧望さんは、バッハ「無伴奏パルティータ」とモンテイ「チャールダーシュ」を弾いておられました。受賞のことをその直前に新聞で知ったばかりで、目の前で本人の演奏が聴けるとは思ってもいませんでした。その他の演奏家もパガニーニ「カプリス」、サンサーンス「死の舞踏」、モーツァルトやシベリウス協奏曲など、素晴らしかったです。また前月号で紹介した「第九」のコンミスであった、湯淺いづみ(バイオリン)と岸本聖華(ピアノ)、福本真琴(チェロ)による若手アーテイストトリオによる、メンデルスゾーン「ピアノ三重奏」も均整がとれており、しかも情熱的な演奏で感動しました。

2022年12月鳥取市で行われたNext Generation:若きアーテイストたちの夢の響演

音楽関係に限らず若手の活躍ぶりは目覚ましく、12月には日本新聞協会主催第13回「いっしょに読もう―新聞コンクール」小学生部門最優秀賞を鳥取県岩美北小6年生、森川暖人君が受賞していました。5万7千人の応募からの最優秀賞です。内容は「化学物質過敏症」に関するもので、柔軟剤やシャンプーの香りなど、日常ある様々な化学物質に反応して体調を崩すことを調べたものです。将来はこの方面の科学者になるのが夢であると言っており頼もしい限りです。(2023.1)

ウサギ年

地酒銘柄 
鳥取県の日本酒蔵元。鳥取県酒造組合パンフレットより
日本酒を飲むウサギをあしらった
神話「因幡の白兎」で有名な鳥取市「白兎(はくと)海岸」 鳥取市観光協会HPより (2023.1)

外科希望の学生教育

 以前から外科の領域では若手医師を育もうという試みが全国的に行われています。こちらでは年に2回山陰外科集談会が行われ山陰地方の外科施設から発表されます。今回は昨年12月に島根大学医学部で開催され、一般演題以外に島根大学と鳥取大学の学生や研修医からなるセッションが組まれ、両大学の外科系教授で当日出席した6名で評価しました。その内容として、研究を行うに至った「背景」、対象の選び方、研究の方法と分析方法が妥当かどうか、結果とそれを支持、或いは相反する他の研究との比較、今後の診療にどのように役立てるか、など的確に発表できたかどうかを採点するのです。また幾つかの質問に適切に回答できたか、現役の医師でも難しいと思われます。このような試練の中、当消化器小児外科に研究室配属で来ていた医学部3年の学生が表彰されました。

3年生と言えばやっと基礎医学の講義が終わり臨床医学の講義が始まったばかりというところですが、「消化器癌の予後を左右するCachexia(悪液質)Index」というテーマで、実際の手術患者のデータを解析し、現役外科医よりも堂々と立派に発表していました。その他医局内で行った抄読会では「Science」という一流の雑誌から「大腸がん発生に関係する腸内細菌」についての論文を紹介してくれ、実験や研究解析の手法の説明も詳しく、私の学生時代と比べて遥かに優秀であると思われました。

2022年12月に島根大学医学部で行われた「山陰外科集談会」 優秀賞にて表彰される鳥取大学医学部3年生

芸術や医学に限らず、スポーツ、ビジネスなど色んな分野でこのような「若い力」を育成し、その成長を見届けるのは楽しく嬉しいものです。(2023.1)

岩見神楽(いわみかぐら)

今年の4月に鳥取大学附属病院に「ゲストハウス棟」がオープンしました。

1階に調剤薬局とコンビニ、2階に多目的ホール、3階には患者さんや家族のための宿泊施設であるゲストハウス(化学療法のために外来に来られる患者さんや入院患者さんのご家族が利用される)があります。この2階の多目的ホールには4K対応の映写機、200インチの大型スクリーンが完備され、音響設備も抜群に設計されています。時々自主映画などが上映されていますが、FIFAサッカーワールドカップなどを大迫力画面で観たいものです。

先日、この多目的ホールで病院主催「岩見神楽(いわみかぐら)」が公演されました。日本の伝統芸能の「能」「狂言」「歌舞伎」などよりはるか昔で、わが国最古の芸能といわれます。題材は日本神話の「天岩戸(あまのいわと)」伝説にさかのぼり、岩戸にお隠れになった「天照大御神(あまてらすおおみかみ)」を誘い出すために、「宇津女命(うづめのみこと)」が岩戸の前で舞った妖艶な踊りが起源とされています。まるでリヒャルト・シュトラウス作曲オペラ「サロメ」の「7つのヴェールの踊り」のようです。今回の出演者は島根県(東部の出雲の国と西部の岩見の国)津和野町を本拠地とする「左鐙社中(さぶみしゃちゅう)」の方々で、迫力のある舞台を堪能しました。大学生時代に親しかった浜田市出身の友人にクラシック音楽の話をしていた時に「長谷川。お前、神楽って、観たことあるか。オペラに通じるものがあるからいっぺん観た方がえーよ」と言われたことがあります。この時からずっと気にはなっていたのですが、なかなか機会が無くて、約40年以上たった今回、やっとその夢が実現しました。

今回の演目は「塵輪」「恵比寿」「天神」「大蛇(おろち)」の4つでした。印象的なところを紹介しますと、「恵比寿」は大阪今宮や西宮の戎(えびす)神社で「商売の神様」で有名ですが、釣りの名人で米子の海岸でにこやかに「鯛」を釣る姿は微笑ましいものです。「八岐大蛇(やまたのおろち)」伝説の「須佐之男命(すさのおのみこと)」は、札付きの「ワル」のため高天原(たかまがはら)を追われたのですが、出雲の国にたどり着くと7人の娘が大蛇にさらわれたと嘆く老夫婦に出会います。この「ワル」は知恵を働かせて大蛇に毒酒を飲ませて退治するわけです。8つの頭をもつ大蛇との格闘は小太鼓、大太鼓の囃子も入り、煙も出て迫力満点で、海外でも大人気のようです。その尻尾から出ていた剣を「天の村雲の剣」と名付け、天照大御神差し出して、最後に残った美女「稲田姫」と結ばれたということです。何か白けた話ですが、因みにこれが日本で最初の結婚とされているようです。(2022.12)

にこやかに鯛を釣る「恵比寿」
「須佐之男命」ワルそうな顔をしています。
八岐大蛇(やまたのおろち)
2022年12月1日 | カテゴリー : 歌舞伎・能 | 投稿者 : thth0922

日本酒に変身した「稲田姫」

米子市に醸造元があります。須佐之男命(スサノオノミコト)が八岐大蛇(ヤマタノオロチ)を退治して助けたという、出雲地方の神話における美人伝説に基づく。キリっとした山陰の地酒の中にあって、まろやかな味を呈します。(2022.12)

記憶

「記憶」をどのように人間は獲得するのでしょうか。未だに明確には解明されていなのですが、コンピュータでは二進法「0」「1」に暗号化された情報がそれぞれ指定された場所に磁気や化合物の変化として永久に保存・記憶されます。ところが人間などの生体内ではこのようなメカニズムは無く「記憶物質」も発見されていません。アセチルコリンやノルアドレナリンなどの神経伝達物質がシナプスを介して情報を伝達することは分かっていますが、そこから記憶がどのように保存されるのか。おそらくシナプスが変化して情報の伝わり方を調節しているようですが、人間が誕生してから意識が自分の中にどのように発達してくるのかなども詳しくは分かりません。胎生期から脳は最も著しく発達し、生まれてからはいつの間にか自意識が芽生え、色んな行動や学習をするようになっているのですが・・・・・。(2022.12)

第九米子公演会

年末と言えば、ベートーベンの「第九」。何故年末に演奏されるのかは諸説があり正確なことは言えませんが、村上先生が以前に紹介されたように、日本で最初に第九が演奏されたの徳島県の「板東捕虜収容所」でのドイツ兵による演奏会です。これには確かな証拠があります。

 鳥取県からは多くの文化人、音楽家を輩出しており、今回のソロ歌手でテノール担当の「山本耕平」氏。どこかで見聞きしたことがあるなと思っていたら、NHK「らららクラシック」という番組(俳優高橋克典やアナウンサー石橋亜紗、小説家石田衣良、作曲家加羽沢美濃らが司会していた)や「NHKニューイヤーオペラコンサート」に出ておられました。その時の記憶通りの方でした。その他コンミス湯淺いづみ、メゾソプラノ塩崎めぐみ、バス小鉄和広等、地元の方々のレベルの高い素晴らしい音楽を堪能しました。(2022.12)

島田先生 油絵作品展

 秋も深まり良い季節が訪れますね。「スポーツの秋」「読書の秋」「食欲の秋」、様々ですが、私は「芸術の秋」を満喫したので最近の経験をお話します。

 以前福山医療センター小児外科に顧問医師として来られていた「島田憲次先生の絵画個展」が大阪池田市であり、招待状を頂いておりました(図)。

 5年に1度開かれており、今回は第4回目ということでした。招待葉書にある「奥入瀬渓流」や「トルコのカッパドキア」等、様々な風景画がお得意のようでした。

 中でも印象的であったのはポーランドの「アウシュビッツ収容所」の油絵2点で、2018年コロナ禍前に現地に行かれたそうです。

 著作権の問題があるので絵の紹介は出来ませんが、テレビや映画でよく登場する貨物列車が入ってくる収容所の入り口に2人のラビ(ユダヤ教の指導者、僧侶)が偶然におられ描かれています。以前テレビドラマ「白い巨塔」で医学部教授になった財前五郎(この時は唐沢寿明主演)がアウシュビッツを訪れており、その案内人に「あなたは収容所を見学されて、殺される側の気持ち、殺す側の気持ちのどちらを考えましたか」と聞かれ、彼は「医師であるので殺す側の気持ちは分からない」と答えていました(但し、山崎豊子作小説の原文ではミュンヘン近郊のダッハウ収容所を訪れており、このやりとりはありません)。

 財前教授はドイツで講演、手術を披露しているのですが、自分の執刀で行った遠隔転移のある消化器癌患者が渡欧中に亡くなり帰国後遺族に起訴され、自分も後に末期癌で亡くなるのですが何か暗示的なものを感じさせます。

 また戦前のドイツ人のように純粋で勤勉な民族は先導者に簡単に操られて、ある意味「閉鎖的」になり容易に国家的な過ちに突き進むことを痛感させられます。(2022.11)

国際学会

 先日、大阪で国際学会があり久しぶりに出席しました。

 2020年からのコロナ禍のためこの3年間多くの学会はWEB会議となっていました。国内学会はまだ良いのですが、国際会議では時差があるためアメリカやヨーロッパなどでは昼間に開催されているのが、日本では早朝や夜間、ひどい時には深夜になることがあります。

 そういう時に英語を聞き取るのは大変で、ましてや質疑・応答など円滑に出来ようはずはありません。今回の内容は、小児外科における困難な病気の原因や新しい治療に関する話題が多く、3年間でかなり多くの進歩が感じられました。

 とりわけ新しい領域である分子生物学や再生医療を使った新たな治療法の開発などが目を引きました。学会発表においては演者がスライドを使って画像やビデオで実験の方法や結果について発表し、演者同志、或いは聴衆と討論するわけですが、発表手法によっては微妙な解釈の違いなどがあります。

 つまり発表する時は意気揚々としゃべっていても会場を離れて休憩中やレセプションの場などでFace to faceで話すと、「自信が持てない仮説」や「まだ確信的でない結果」など、微妙なニュアンスが伝わってくることがあります。

 やはり医学の進歩にはお互いに徹底的に討論し合う場が必要なのです。また同じような実験をやっていたり興味のある分野においてその権威者と親しくなってメールアドレスを交換して今後の研究に役立てることがあります。私は今回北米やヨーロッパ、イスラエルから来られていた、論文でしか名前を知らなかった数人の権威者と知り合いになりました。またカナダに留学中の日本人の若い医師から早速私宛に「非常に重要な指摘を頂きご指導いただいたことに感謝します」というメールを頂きました。こういうことがあると嬉しいですね!!

 コロナウイルス感染を広げないことは確かに重要なことですが、医学の世界では日進月歩の新たな展開があり、対面での学会は医療者や研究者にとっては極めて重要なことです。英国のチャーチル元首相は第二次世界大戦で最初英国が参戦しなかった根拠として、「目的と手段のバランスが重要である」と言っていました。また私の友人が毎年行っていた健診での内視鏡検査を昨年コロナ蔓延のために自粛したところ、この夏に食道がんが見つかり手術を受けました。幸い治癒切除が可能でしたが、毎年健診を行っていたら化学療法や手術からの回復など、もう少し楽であったかも知れません。

ハンガリー国立歌劇場の「魔笛」

 2022年10月大阪フェスティバルホールでハンガリー国立歌劇場のモーツァルト作曲オペラ「魔笛」を観ました。オペラはこの頃モンテベルディやスカルラッティなど殆どイタリア語で書かれており、モーツアルト作では有名なイタリア人台本作家ロレンツオ・ダ・ポンテによる3部作「フィガロの結婚」「ドン・ジョヴァンニ」「コジ・ファン・トゥッテ」が知られていますが、この早熟天才作曲家は12才で「ぶりっこ娘」(1700年代からぶりっこがいたのは驚きです!)を作曲しています。

フェスティバルホールは2015年リニューアルし3000人収容となりました。

2015年リニューアルし3000人収容となった大阪フェスティバルホール

 「魔笛」はモーツアルト最後のオペラですが、シカネーダーによるドイツ語の台本でした。話の内容は省きますが、序曲、夜の女王などの登場人物のアリアや重唱は美しく、ワインサービスは無かったものの至福の3時間でした。(2022.11)

ハンガリー国立歌劇場によるモーツアルト作曲「魔笛」。パンフレットより

ハワイ現地でのコロナ感染対策

 ハワイ現地での感染対策については、私は1日3回の鼻うがいと飛行機内などではマスクを着用していましたが市内では殆どの人はやはりマスクをしていませんでした。呼吸がしにくく息苦しい、熱中症になりやすい以外に言葉が聞き取れない、表情が分からないなどの問題が指摘されており、少しだけ話したアメリカ人も「何故日本人はマスクを抵抗なくするのか」と不思議に語っていました。日本語は母音が強調されるため、マスク越しでも声が良く通りますが、英語などは子音が主になるため紙や布を通すと伝わりにくいのです。また欧米人は口から発する言葉とともに口許で感情を表現するのに対し、日本人は目で感情を表すと言います。よく小説などで契約が済んだ後「双方談笑し合っていたが、目だけは笑っていなかった」とは良く目にするところです。ANAの客室乗務員(CA)さんの顔は大きなマスクで覆われ、髪型や目元だけでは誰か判断できず常に胸元を視て名札を確認しましたが、私の視線はスレスレであったかも知れません。面(おもて)を使用した芸術、「能」を大成させた世阿弥は「風姿花伝」で「秘すれば花なり。秘せずは花なるべからず」と言いましたが、隠していた方が価値があるのだという、日本人の感性を表しております。帰りの便の機内でビールの入ったコップを倒し、辺りにぶちまけてCAさんを呼んだ時には「良いですよ。大丈夫ですよ」とにこやかに言ってくれましたが、あの目は明らかに怒っていました。物事の本質が隠されることを「マスクされる」とも言い、良い意味にも悪い意味にもとられるようです。(2022.10)

  

マスク
能の面(おもて)(Wikipediaより)